奈良美智『青い森の ちいさな ちいさな おうち』―2012.11.6


奈良美智夜露死苦ガール2012」とポール・モリソン「オクリア」

青森で奈良美智を見ること

 青森県立美術館での『君や 僕に ちょっと似ている』と、十和田市現代美術館での『青い森の ちいさな ちいさな おうち』の会期が、いよいよ今度の月曜日(1月14日・成人の日)までとなった。

 本当ならば、この冬の時期に県美と現美を巡りたかった。『君僕』は横浜で2回見たけれど、奈良さんもTwitterで何度か言及していたように、やはり〝地元〟で見るということをしておきたかった。*1
 結局、先日の帰省中には、県美はおろか、実家からほど近い現美にも行けなかった。きっと後々残念な想いが募ってくるだろう。たとえば、いつか県美に行ったとき「あおもり犬」を見てそのことを思うのかもしれない。

 ここでは、晩秋の現美を訪問してきたときのことを書きます。
 記事としては新鮮さもないし、秋と冬ではまた雰囲気ががらりと変わっているだろうから、参考になるかどうかわからないけれど、この記事を見た方で、時間の許す方は、残り4日間となった展示を見届けてほしいと思います。*2

2012.11.6

 紅葉もくすみ始め、桜の落葉が官庁街通りを埋めつくさんという中、降りしきる冷雨。おそらく昼食の帰りだったと思うが、十和田現代美術館へと向かった。

 まず、「夜露死苦ガール2012」。建屋にカッティングシートで貼られた女の子は、近くで見ると本当にでかい。雨にも負けずにポップに立っている。
 現美の常設はもちろん、十和田現代美術館の官庁街通りには、素敵な作品が軒を連ねている。*3奈良さんがその仲間入りをしたというのはとても嬉しい。

 今回の展覧会は、営利目的でなければ撮影可能だということ。*4個別の作品もいくつか撮らせていただいたが、全体の雰囲気が分かるようなものだけ。


 これが今回の〝おうち〟。館内のベンチシートで、青い森の夜を堪能できるのがGOOD。空間の心地よさは、あの弘前の『AtoZ』を思い出した。*5
 おうちの中には、作品が所狭しと散りばめられており、本当に隅々まで奈良さんの手が行き届いているのがわかる。遠くに輝く月がまた穏やかな表情をしているんだな。


 カフェにもずらり。十和田に〝ナゴヤ巻嬢〟が上陸していました(笑)。カフェを出る際にも、〝お見送りの方〟がいますので、しっかり挨拶してくださいネ。*6

 今回、なによりも印象深かったのが、あの原発デモで噂の「NO NUKES」少女ではなく、ポスターにも載っている「浮遊少女」。
 地平たかだか数十センチくらいを浮かんでいそうな感じの少女。あの浮遊を間近に見られて、なにか自分の〝おもり〟がころっと落ちたように思う。また、淋しい晩秋の情景にと合わせても、どこかふっと浮く感じが愉快だ。きっと、冬であれば別の浮遊感が楽しめそうだ。

 奈良さんの描く少女を見ていると、どこか自分を見つめ返してしまうし、なにか思い起こされてしまう。そんなことを改めて思った十和田の晩秋だった。

*1:12/12/17「青森は自分が育って感性を確立させた土地で、特に冬の青森には僕の作品を読み解く空気があると思います」12/12/31「横浜を1とするなら、青森は5くらいの展示環境になった」

*2:奈良さんはTwitterで、「国内での個展は10年はしないつもり」(2012/12/16)と語っている。

*3:草間彌生から新進気鋭の方々まで。ぜひ隅から隅までご覧いただきたい!

*4:当ブログは、作品紹介としてアフィリエイトを貼っているが、本記事は遠慮した。

*5:東京青山の「AtoZ Cafe」にも小屋がある。もっと実用的ではあるけれど、奈良美智grafを楽しめる場所。

*6:2012/1/18追記。カフェのドローイングは、2012/1/24まで展示とのこと!