『ドラゴン・タトゥーの女』

カッコイイとは、こういうことさ。


月刊誌「ミレニアム」で大物実業家の不正行為を暴いたジャーナリストのミカエル(ダニエル・クレイグ)。そんな彼のもとに、ある大財閥会長から40年前に起こった兄の孫娘失踪事件の調査依頼が舞い込む。連続猟奇殺人事件が失踪にかかわっていると察知したミカエルは、天才ハッカー、リスベット(ルーニー・マーラ)にリサーチ協力を求める。(シネマトゥディより)

 Twitterで流れてきた情報で、予告映像を観てから心待ちにしてきた。映画を観ることを日常としてこなかった私にしてみれば、奇異なことだ。最近は、もっぱら週1シネコン通いだけれど。
 今作がミステリということもあり、全く情報を遮断して封切りを迎えた。

 オープニングが痺れるほどカッコいい。そして、そのカッコいいという印象が、作品の徹頭徹尾に行き届いているように思う。
 まず、落ち着いた色調が、陰鬱そうな北欧の冬や作品世界に酷くしっくりくる。そして、オフビートでクレイジーなリスベット、真面目で正義感のあるミカエルにもぴったりだ*1
 そして、緊張のさせ方が素晴らしい。サスペンスミステリを観てるなって雰囲気をビンビンに感じられる映像美に魅せられた。

 ダニエル・クレイグ、最初はなんか老けているというか、枯れてるなと思ったけれど*2、記者として丹念に事件を捜査していく様に、だんだん生き生きしてくるように見える。
 あと、その筋の方は、老眼鏡のかけ方に萌え萌えすること請け合いだろう。いや、やっぱりカッコいいな、クレイグ。

*この眼鏡を、あごあたりに引っかけているのが萌え。ぜひ劇場で。

 今作でアカデミー主演女優賞ノミネートのルーニー・マーラは、まさに体当たりで迫真の演技。『ソーシャル・ネットワーク』のザッカーバーグの元恋人役だった人ととても同一人物とは思えないくらい。
 三部作でリスベット≒マーラがどう成長していくのか見守っていきたい。

*とてもこの人と同じとは思えない。

 で、肝心のストーリー。
 リスベットのキャラクタを描写するためと思われるストーリーが意外とたっぷりある。キャラクタを立たせんがためとは言え、主線とは直接的に絡まないので、肩すかし感あり。第2作以降のお楽しみといったところかしらん。それとも、ミステリの主線だけじゃないのが、『ミレニアム』シリーズ通じての魅力なんだろうか。気になるところ。
 記者やスーパーハッカーが主人公という点において、文字を追う以上のスリリングさを獲得するのは困難そうではあるが、そこは前述のフィンチャーの画で魅せているので問題なく、全く退屈することはない。

 まあ、たぶんいろいろツッコミどころ*3はあるんだと思うけれど、映画で出来ることやりましたぜ感があるので、過不足ない158分を過ごせた。
 この昂奮は、スウェーデン発のこの大ベストセラーミステリを知らなかったことが悔しくなるほど。いや、これから原作小説を読める幸せがあるか。原作に当たりたくなる映画に出会えたことの至福を噛みしめながら、帰途についたのだった。

 というわけで、今回は、★★★★☆(星4.5個)でお願いいたします。

ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女 (上) (ハヤカワ・ミステリ文庫)

ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女 (上) (ハヤカワ・ミステリ文庫)

ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女 (下) (ハヤカワ・ミステリ文庫)

ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女 (下) (ハヤカワ・ミステリ文庫)

*1:と思って、Wikiってみたらフィンチャー監督が好む色調なのね。原作とフィンチャーは、出会うべくして出会ったと言うべきだろう。

*2:裁判に負けて意気消沈しているという状況であれば納得感あるかも。

*3:スウェーデン舞台なのに全編英語とか、ストーリーが原作のダイジェスト的で薄いとか。