十年一昔

 十年一昔とはよく言ったもので、その当時、WEB柿喰う客を担当していた。
 「kaki-qoo-kyaku」でURLを取得したところ、
 「kaki-kuu-kyakuじゃないとKKKにならないじゃん、もー」
 って、代表に怒られたっけ。
 そりゃあ、センスのない私が悪うございました。

 まあ、たまたま第一回公演からの節目の年に本多劇場での公演。
 柿を離れて久しいけれど、10年でここに辿り着いたんだなあという感慨は正直あった。
 一応、すごろくの“あがり”みたいなもんだものね。
 って、下北サンデーズかなんかで言ってた。たぶん。

 そんな感慨も観劇後には吹き飛んだけれど、劇評はまた近日。

試される大地、いや宇宙 ― 『ゼロ・グラビティ』


地表から600キロメートルも離れた宇宙で、ミッションを遂行していたメディカルエンジニアのライアン・ストーン博士(サンドラ・ブロック)とベテラン宇宙飛行士マット・コワルスキー(ジョージ・クルーニー)。すると、スペースシャトルが大破するという想定外の事故が発生し、二人は一本のロープでつながれたまま漆黒の無重力空間へと放り出される。地球に戻る交通手段であったスペースシャトルを失い、残された酸素も2時間分しかない絶望的な状況で、彼らは懸命に生還する方法を探っていく。
シネマトゥデイ」より

ゼロ・グラビティ”を体感せよ

 最初にスペース・デブリ宇宙ゴミ)について知ったのは、民放のバラエティ番組だったと思う。人工衛星軌道には多くのデブリがあり、船外活動は危険であるとかそういう、演出過多なおどろおどろしい感じの。それを“体感”することになろうとは。

 情報を映像と音響(と少しの音楽)に注ぎ込み、本筋の物語や派生する物語をできるだけ静かにさせ、“いま、ここ”に集中させたこと。それがすべてであり、美点であると思う。先を想像させないだけの圧倒的な映像と音響にただ流されるがままになって、息をつくために視線を少し上にずらして天井が見えたとき、これは映画なんだと再認識させられるくらいのめり込んだ。IMAXすげーーー宇宙怖えーーーというのが素直な実感だ。
 こればかりは映画館で観てください(3Dは必須、できればぜひIMAXで)という他ないくらいの映像体験だった。90分間にわたるアトラクションにただただ身を預けていればいい。

*****

 と終わるだけでは感想というには乏しいので、蛇足ながらネタバレありの雑感を。

 印象的だったのは、犬の鳴き声を聞いて、ライアン(サンドラ・ブロック)が犬の鳴き真似をするシーン。
 思い出されるのは、スプートニク2号に乗ったライカ(もしくはクドリョフカ*1)という名の犬。設計上大気圏再突入が不可能である人工衛星に乗ったその犬がいつ死んだか諸説あるようだが、同じように独りで鳴いていたのだろうか、などと考えさせられざるを得ない。
 彼女は(本当かどうかは別として)「研究費が増える」という目的で宇宙へと駆り出されたことを示唆している。ライカ(もしくはクドリョフカ)だって好きで宇宙に飛ばされたわけではない、当然のことながら。そのふたりを重ねるようなシーンに読んでしまう。

 中国の神舟に救われるという点が今までなら無かっただろうなと思う展開でもあった。
宇宙へ行くにはロシア語が必須であるけれど、今後は中国語が必須という状況になってもなんら不思議ではない、ってことで。少なくとも「神様の言うとおり」なんてボタンを押していたら助からない可能性は大いにある(笑)。
 いや、ISS国際宇宙ステーション)とは違い、天宮(中国の宇宙ステーション)は独立独歩でやっていくから関係ないという話でもあるのかな。そのへんは現在の国際情勢をそのまんま表している。それでもいざという時は朋友だよな?的な。

 まあ、設定をツッコミ始めると粗だらけであることは、NASAが声明を発表していることから明らかだ*2。ただ、NASAがなんらかの対応をせざるを得ないくらいには、その場では引き込まれるリアリティがあったし、あまりに多くの観客がゼロ・グラビティ体験を求めたということだ。
 映画館で席から立ち上がる時に、私は確かに床を踏みしめ、重力を感じた。絶対に宇宙なんか行くもんか。

ベルカ、吠えないのか? (文春文庫)

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*宇宙に飛んだ犬・ライカが登場する、犬を巡るクロニクル。

アポロ13 [Blu-ray]

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*ベタだけど、これを思い出しました。

*1:犬の名前には諸説ある。

*2:そもそもああいう事故が起こるわけはないとか、宇宙服の下はおむつだとか。http://news.livedoor.com/article/detail/8469888/

こんなもの貰いましたけれども…

 なにはともあれ、独身小胖が貰うものではない。

 中には「おなかに赤ちゃんがいます」ストラップなど入っていて、ここぞという時に使わせてもらおうおうと思います。

水下きよしさんのこと

 ビールでへろへろになっている帰り道、Twiterの一文で息が止まった。足が止まった。
 花組芝居の俳優・水下きよしさんの訃報。

 先月の劇団の公演を体調不良により降板されたということを聞き、大丈夫かなとちらりと思ったものの、さほど気にも留めなかった。それから一月あまりで訃報に接することになるとは。
 ご贔屓の方々は元より、劇団員、そして座長の加納幸和さんのショックは如何ばかりか。

 “ネオかぶき”を標榜する花組芝居での屋号は「武蔵屋」、紋は「飛び蝙蝠」。その飄々として且ついぶし銀の佇まいは、50代のおじさんというよりも少し年の上のお兄さんといった雰囲気だった。
 いまぱっと思いつく水下さんの姿は、花組芝居よりもどちらかと言うと“すっぴんの水やん”と言ってよいのやら。Borobon企画『涼〜すずみ〜水』の「阿房列車」(原作:内田百輭、作:平田オリザ)での妙な具合の男性客であったり、劇団の後輩にあたる堀越涼主宰のあやめ十八番『淡仙女』での落ち着いた親父さんだ。
 もう、観られない? まさかね。まさか。

 劇団の公式Webサイトに繋がらないので、ネットをうろうろしていたら、こんなものが見つかった。昨年の12月に収録されたようで、最後のお仕事だったのだろうか。水下さんの声がただただ沁みる。

http://www.01-radio.com/tcs/archives/25680

 二度ほど酒席をご一緒させていただく機会があり、本当に美味しそうにお酒を飲む方だったことが印象に残っている。献杯をするとともに、ご冥福をお祈りいたします。