水下きよしさんのこと

 ビールでへろへろになっている帰り道、Twiterの一文で息が止まった。足が止まった。
 花組芝居の俳優・水下きよしさんの訃報。

 先月の劇団の公演を体調不良により降板されたということを聞き、大丈夫かなとちらりと思ったものの、さほど気にも留めなかった。それから一月あまりで訃報に接することになるとは。
 ご贔屓の方々は元より、劇団員、そして座長の加納幸和さんのショックは如何ばかりか。

 “ネオかぶき”を標榜する花組芝居での屋号は「武蔵屋」、紋は「飛び蝙蝠」。その飄々として且ついぶし銀の佇まいは、50代のおじさんというよりも少し年の上のお兄さんといった雰囲気だった。
 いまぱっと思いつく水下さんの姿は、花組芝居よりもどちらかと言うと“すっぴんの水やん”と言ってよいのやら。Borobon企画『涼〜すずみ〜水』の「阿房列車」(原作:内田百輭、作:平田オリザ)での妙な具合の男性客であったり、劇団の後輩にあたる堀越涼主宰のあやめ十八番『淡仙女』での落ち着いた親父さんだ。
 もう、観られない? まさかね。まさか。

 劇団の公式Webサイトに繋がらないので、ネットをうろうろしていたら、こんなものが見つかった。昨年の12月に収録されたようで、最後のお仕事だったのだろうか。水下さんの声がただただ沁みる。

http://www.01-radio.com/tcs/archives/25680

 二度ほど酒席をご一緒させていただく機会があり、本当に美味しそうにお酒を飲む方だったことが印象に残っている。献杯をするとともに、ご冥福をお祈りいたします。