2013年のコンテンツを振り返って(小説・演劇・映画)

 ろくになにも書かずに今年を過ごしてしまったけれど、最後くらいはしっかりまとめておきます。

小説――棚に惹かれない日々の中で

1.江波光則『ストーンコールド』・『スピットファイア』・『スーサイドクラッチ』(魔術師スカンクシリーズ)
2.ゲイリー・シュタインガード『スーパー・サッド・トゥルー・ラブ・ストーリー
3.坂上秋成『惜日のアリス
次点.上田岳弘「太陽」

 伊勢佐木町有隣堂本店が通勤路なのだけれど、ほとんど棚に惹かれることがない。他の書店でもその傾向は続き、なんとなく本を読まなかった一年だった。というか、テン年代に入ってそんな感じ。

 ニトロプラスのスタッフが書いたのかと思ったくらいのハードボイルド・ライトノベルが1位。毛色の違う3冊合わせ技で持っていかれた感じ。
 2位の『SSTLS』は、近未来SF×近代恋愛小説という組合せがなかなか笑わせてくれる。こういう本が受ける土壌が辛うじて残っている場所もあるのだな、と勇気をもらった。
 3位はLGBTが登場人物の作品として今後も残る秀作であると思うし、確かにポスト村上春樹の作品であると感じた。坂上さんの次作への期待を込めて。

演劇――“いま”を語る、魅せる

1.GORCH BROTHERS PRESENTS『飛龍伝』
2.いわき総合高校総合学科『ブルーシート』
3.時間堂『テヘランでロリータを読む』
次点.風琴工房『hedge』

 最盛期で年間150本観劇した年もあったのに、ここ2、3年でガクッと本数は落ちたまま。いま明らかに興味が落ちているし、「これ観られなかったら、別にあれも観なくていいや」という負の連鎖もある。でもまあ、月1、2本が程よい距離感なのは確か。

 中屋敷法仁演出で、つかこうへい『飛龍伝』という戯曲は現代の物として確かに甦ったと思う。つかこうへいが今後も上演されていくことに確信が持てたというか。それくらい、黒木華×玉置玲央は凄まじかった。
 『ブルーシート』は、いわき総合高校の校庭で作品を観たこともあり、いわきの高校生という時間を見せつけられた。特にメッセージを込めなくても、“あるがまま”というのは何よりも雄弁だ。
 『テヘランでロリータを読む』の小説は未読だったということもあるのだけれど、「読むこと」について今年のどの小説よりも考えさせられた。ナボコフ『ロリータ』も読んでみたけれど、ハンバート・ハンバート噴飯物のど変態。
 小劇場の中でも企業の現場を“見つめてきた”風琴工房『hedge』で、いわゆるファンドのイメージも変わった人が多いと思う。やっぱり演劇関係者って“反体制”でナンボって感じなんだなあと思った一年だけに、そうではない“見つめる”ことにわたしは注目したい。

映画――アニメーションの年に

1.『劇場版 魔法少女まどかマギカ[新編]叛逆の物語』
2.『風立ちぬ』、『夢と狂気の王国
3.『地獄でなぜ悪い
次点.『劇場版 空の境界 未来福音
   『攻殻機動隊 ARISE』「border:1 Ghost Pain」「border:2 Ghost Whispers

 下半期にいくつかのアニメ作品を皮切りに本数を重ねた。弟が上京し、月一の近況確認として一緒に映画鑑賞とかで割といろいろ観ることができた。いまは映画が一番気持ちの距離としては近い感じ。

 「TVアニメ版の神的な目線から、一気に人間の目線に落ちた」なんて悪評を聞いたけれど、結局わたしたちの語りうる愛憎は、そういうことなのかもしれない、なんて思った『まどマギ』。
 『風立ちぬ』を観た後で、『夢と狂気の王国』をはじめとするドキュメンタリーを観たせいか、全部ひっくるめて宮崎駿のエピローグのように感じる。でも、最初に思った「見よ、飛行機の高く飛べるを」の美しさは間違いないと思う。
 とか何とか難しいこと言ってみても、馬鹿馬鹿しくチャンチャンバラバラやられちゃうとスカッとするよね。自戒も込めて『地獄でなぜ悪い』。
 そして、次点ながらも、『空の境界』でゼロ年代の確かな終わりを、『攻殻ARISE』でテン年代のようやくの声を聞けたことも忘れないでおきたい。

というわけで

 来年もよき作品に出会えますよう。


*小説ベスト3関連

ストーンコールド 魔術師スカンクシリーズ 1 (星海社FICTIONS)

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スピットファイア 魔術師スカンクシリーズ 2 (星海社FICTIONS)

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スーサイドクラッチ 魔術師スカンクシリーズ 3 (星海社FICTIONS)

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スーパー・サッド・トゥルー・ラブ・ストーリー

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惜日(せきじつ)のアリス

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*演劇ベスト3関連

飛龍伝 神林美智子の生涯 (集英社文庫)

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テヘランでロリータを読む

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ロリータ (新潮文庫)

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*映画ベスト3関連

風立ちぬ・美しい村 (新潮文庫)

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